創刻のアテリアル
エウシュリー | WindowsXP/Vista/7 | 1024x576 |
9870円(税込) | 1Play15時間 | 属性:ファンタジー、カードゲーム |
難易度:8 | 2012/4/27発売 | オススメ:☆☆☆☆ |
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仲間の力を集結して異世界からの脱出をめざせ
両親が行方不明となり、妹の仙崎美來と2人で暮らしている主人公。そんな主人公が暮らしている天慶市が歪秤世界と呼ばれる異世界の一部と繋がってしまう。天使と悪魔、そしてクリエイターと称される化け物が争う世界で、主人公たちは世界の運命を揺るがす戦いに巻き込まれていく……。
©エウシュリー
エウシュリーの作品というと『戦女神』型のダンジョン探索RPGと、『幻燐の姫将軍』型のシミュレーションRPGが基本システムになっているものが多い。この2シリーズ以外でも、システム的にはこれらの作品の派生システムになっていることが多いしね。それに対して本作は完全な新システムを採用。しかもこれまでエウシュリーが採用したことのないカードゲームということで、どんなものかと思いプレイしてみた。
結論からいえば、思った以上に完成度が高かったというのが感想かな。こうしたカードゲーム経験者にとっては当たり前かもしれないけど、単純に強いカードを集めれば強いデッキになるというわけじゃないので、戦い方を考えながら強いカード、弱いカードをうまく組み合わせていく必要がある。そのためゲーム後半になっても作業的にならないのが良い感じ。また1周目のプレイでは手持ちのカードの種類が少ないので、手に入ったカードでどう勝ち進むかを考えることがメインになってしまうんだけど、2周目からはある程度手持ちのカードの種類が揃ってくるので、デッキの組み方を工夫することができるようになる。その点でカードゲームとしての面白さは2周目以降が本番となり、周回プレイの楽しさも十分にある。もちろんゲームバランスもしっかりしていて、いい加減なデッキを組んでいると大苦戦は必至だけど、きちんと考えてデッキを組めば意外とサクサクとゲームを進めることができるのが嬉しところだ。また、カードのデザインも美しいし、種類も膨大なので収集癖のある人にとってはカードをコンプリートするということも楽しみの1つになるだろう。
©エウシュリー
ただ、細かい点を見ていけば不満点もなくはない。まず気になったのが能力に応じてカードをソートできない点。ゲーム序盤はカード枚数が少ないから問題ないんだけど、手持ちのカード枚数が多くなってくると目的のカードを探しにくくなってしまう。この手間を少しでも軽減するために攻撃力やHPでカードをソートできる機能がほしかった。それから自動戦闘機能があまり役に立たないのもマイナスポイント。ぶっちゃけてしまうと、自動戦闘のAIがあまり賢くないんだよね。自動戦闘に任せておくと弱いザコにも負けてしまうことがあるので、結局、手動で戦闘する必要があったりする。次回作ではこうした点を改善してほしいところだ。もっとも、こうした不満点というのは時間をかけて完成度を高めてきた『戦女神』シリーズや『幻燐の姫将軍』シリーズと比べての話なので、1発目の作品でここまでの完成度を見せてくれれば十分だともいえるけどね。
完成度の高いシステム面に比べて、シナリオはやや不満が残る出来。本作の攻略可能キャラは8人なんだけど、これはちょっと多すぎたんじゃないかという気がする。本作はゲーム中盤でシナリオが人間ルート、天使ルート、悪魔ルートの3つに分岐するのだけど、例えば天使ルートに入ってしまえばアカリエンドでもシャネルエンドでもメインとなるシナリオはほとんど変わらない。けれどエンディング、CGの回収のためには同じシナリオを何度も見なくてはいけないわけで、これは面白くない。また人間ルートであればシナリオは明らかに栢木鳴海をメインに進んでいく。鳴海中心のシナリオをずっと見てきて、いきなり杏里咲エンドになったりすると違和感を感じてしまう。これはほかのルートも同様で、そんな違和感を感じるくらいだったら、各ルートにメインヒロインは1人で良かったんじゃないと思ってしまう。ゲーム自体のボリュームは十分にあるのだから、エンディングが3種類でも不満は感じなかったと思うんだけどね。
不満点もないわけではないけれど、ゲーム全体の完成度の高さはさすがエウシュリーといえるレベルだし、CG枚数が差分抜きで191枚、イベント数60というボリュームも素晴らしい。1プレイに時間がかかること、難易度がそれなりであることから誰にでも無条件でオススメできるわけではないけど、ゲーム性の高いやり込み型のゲームが好きという人、カードゲームが好きという人になら安心してオススメできる1本だろう。というわけで、オススメ度は☆4つとしたい。
(by Suno)
堕ちた世界で生き残りをかけた戦いが始まる
天使と悪魔、2つの勢力が長きに渡り熾烈な戦いを繰り広げてきた歪秤世界。その世界へと繋がる扉が開かれ、主人公たちは否応なく見知らぬ大地へと堕とされてしまう。同時に彼らには人間を超越した異能の力が覚醒し、戦う力を得たのだった。危険極まりない世界で生き残るため天使、もしくは悪魔と手を結ぶか、はたまた人間としての道を貫き通すのか、彼らは決断を迫られる。そして戦いの果てに現実世界へと戻るのことができるのか、先の見えない状況の中、過酷なサバイバルゲームが幕を開ける。
©エウシュリー
学園生活を謳歌していた主人公たちが学園ごと異世界に堕とされ、帰還を信じて戦っていくといくのが大筋の流れ。ファンタジー世界での冒険ストーリーが多いエウシュリーの作品としては、現代の学園が舞台としてでてきただけでも新鮮で、これまでの作品をプレイしていた者としては驚きを感じてしまいました。モンスターたちと戦っていく点ではかわりませんが、海斗やアカリが力に目覚めたあたりの反応がいかにも現代っ子らしくて面白かったですね。チェーンソー振りまわしながら戦う杏里咲もインパクトが強烈でした。悪魔か天使、それとも中立を貫くかでストーリー展開が分岐しますが、どちらかが悪い、正しいというものではなく、あくまで立場の違う種族といった面で分かれるだけなのも良かったと思います。周回プレイを繰り返しながら各ルートを辿っていき、それによりゲーム世界への理解が深まっていく形がとられていますので。悪魔ルートだから鬼畜満開の極悪ストーリーなんてことはないので、安心して選択できますしね。
RPGやSLGのジャンルでゲーム性の高い作品を毎回完成させてきた本ブランドですが、今回は新たにカードゲーム式のバトルシステムに挑戦しています。ややこしいルールでもあったら大変だなと考えていましたが、実際にプレイしてみると実にわかりやすいシステムで安心しました。場にカードを召喚していくことで敵カードと削り合っていくというもので、バトル画面を見ただけでパッとルールが伝わるかと思います。兵を召喚して戦わせるSLGに近いイメージですね。カード戦闘以外でも、フィールドで自キャラをうまく動かしながら戦っていく場面が数多く用意されており、その点も含めてSLG色の強いゲームに仕上がっていることは間違いないでしょう。戦闘で敵カードを複製してカードを集めていく楽しさ、最大30枚で構成できるデッキを考えていく楽しさを味わえる点は大きな魅力です。デッキ登録が複数可能で、簡単に切り替えられる点も嬉しかったですね。人間中心で組んだデッキ、天使中心で組んだデッキ、高コスト重視で組んだデッキなど、何種類もデッキを用意しておくことで様々な敵に対して対処できるというもの。危険種やボスといった強敵との戦いに備え、工夫を凝らしたオリジナルデッキを編成してみてはいかがでしょうか。なお、去年の『神採り~』でも感じましたが、ゲーム全体のサポート機能が非常に充実しています。ヘルプだけでなく、ゲーム進行においてもヒロインイベントの状況などが細かく確認できるように作られています。この情報サポートのおかげでヒロイン攻略などは迷いなく進められることでしょう。戦闘は歯応え良く、ゲーム進行は親切にと、この辺りのバランスの良さも素晴らしいですね。一つの形として、ますます完成度を上げた作品の形が見受けられます。
©エウシュリー
エウシュリー作品では1作品3人程度のヒロイン人数となることが多い気がしますが、今回は豪華に8+1人も用意されています。それぞれクリアボーナスのカードがありますので、全員分を揃えると考えると最低8周する必要があるわけです。カードを集めながら周回プレイを繰り返すことが前提となっており、やり込み甲斐のある内容といえますね。隠しイベントについても天使ルートと人間ルートをプレイした後でなければ見ることができず、最短でも3周目でなければ辿り着くことができない仕様です。間違いなく何時間も続けて遊び込めるゲームですので、歯応えのあるゲームをお求めの人にはうってつけの作品としてオススメできますね。ただ、周回繰り返しについては今一歩と思う点も感じました。チュートリアル的な序章が少し長く、毎回それをプレイするのが少し面倒でした。序章くらいはスキップできると嬉しかったですね。極端な話、4章のルート分岐から再プレイでも良かったかも?とも思います。あと、カードの強化についてももう少しサービスしてほしかったと個人的には思いました。せっかくレベルアップしたのにHPが1上がるだけとか、スロットが1増えるだけとか、あまり大差がなかったのが……。キャラ育成のゲームではないのでその辺はバランスを取ったのかもしれませんが、成長を実感できるような上がり幅の方が嬉しかったかなと。カードの種類だけでなく、レベルも含めて最強のデッキを完成させたい人は多いと思います。
余談ですが、予約特典のアペンドディスクがあるとハイシェラ様やまーさまといった過去作品の人気キャラと出会うイベントも楽しめます。男のロマン溢れる銭湯覗きイベントなども用意されており、そちらも必見といえるでしょう。内容的にかなり豪華ですので、特典を手に入れられなかった人のため、いずれDLコンテンツで補完措置があることを期待しますね。
(by RYO)