春色桜瀬

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春の訪れと共に始まる恋

©Purple Software

主人公の通う学園には、その桜の木の下で出会った男女は運命的な恋に落ちるという、恋桜の伝説があった。しかし、恋をするという感情を持たない主人公にとっては、特に意味のあるものではなかった。そんな主人公が恋桜の下で1人の女のコに出会ったことから、物語が動き始める……。

プレイを始めてまず目を惹くのが、画面効果の数々。例えば主人公たちがバスに乗れば、窓の外の風景は後ろに流れていき、吊革はいかにもバスらしく不規則に（見える。実際は一定のパターンがあるけどね）揺れている、公園に行けば噴水の水が流れているという具合で、普通なら単なる1枚絵で済ませてしまうような背景に至るまで、非常に細かい演出が行われている。また、通常の会話シーンは主人公の視点になっているわけだけど、主人公との距離に合わせて、立ちキャラの大きさが細かく変化するのもいい感じだ。この作品だけに限ったことではないけど、Purple Softwareの画面効果の使い方はとても上手いと感じさせられるね。これらの演出だけでも、一見の価値はあるといっても良いんじゃないだろうか。

ストーリーのほうはというと、これは学園ファンタジーといったほうが良いかもしれない。しかし、恋をできない主人公と恋桜が物語のキーになるはずだったんだろうけど、これらの設定がまったく物語に活かされていない。ネタバレになってしまうからあまり詳しくは書けないけど、そのせいで物語のテーマからあきらかに浮いてしまっているヒロインがいたりするんだよね。また、全キャラに共通していえることだけど、物語がクライマックスにさしかかろうかというところでエンドロール、エンドロール後のエピローグではすべての事件が解決した後の姿が描かれるという展開はどうなんだろう？　プレイヤーとしては、物語のクライマックスで主人公とヒロインがどう問題に立ち向かうのかというところこそが見たいわけで、そこをそっくり省略されてしまうと感情移入できなくなってしまう。

©Purple Software

サブキャラの扱いも疑問が残る。このゲームではヒロインが5人、女性サブキャラが5人登場する。このサブキャラがヒロインを食ってしまうほど存在感があり、サブヒロインだけを集めて、もう1本ゲームが作れてしまうほどだ。ここまでくると、「ああ、このサブキャラはファンディスク要員なのね」と思えてしまう。これは穿ちすぎだろうか？　もちろん、ファンディスクを否定する気はないし、人気のあったサブキャラのストーリーがファンディスクに収録されるのも悪いことじゃない。でも、最初からファンディスクを作る気満々で、そのためにメイン級のキャラのルートを削るのは、なにか違うんじゃないか？　こうしたファンディスク商法は、別にPurple Softwareの専売特許というわけじゃないけど、ここまであからさまにされると、ちょっと白けてしまうなぁ、と。

なんだか文句ばかり書いてしまったけど、学園恋愛AVGとしてみれば、オーソドックスにまとまった1本といえる。ストーリーよりも、キャラクター性重視というプレイヤーならば楽しめるんじゃないかな。と言うわけで、オススメ度は☆3つ。ただ、そのキャラクターを活かせば、もっとストーリーにメリハリをつけられただろうし、物語にもっと深みを出せたと思うんだよね。その意味では凄くもったいないゲームといえそう。

   使い方

攻略

選択肢の数は多くないので、難易度はそれほど高くない。ただし、キャラクターに優先順位があるようで、全キャラの好感度を同じにしても、特定のキャラのルートに入ってしまうので気をつけよう。

（by Suno）