蒼海の皇女たち
アナスタシア | Windows2000/XP/Vista | 800x600 |
パッケージ版:6800円(税別) ダウンロード版:4830円(税込) | 1Play7時間 | 属性:軍事、純愛 |
難易度:7 | 2008/3/14発売 | オススメ:☆☆☆☆ |
女性潜水艦乗りたちの獅子奮迅の活躍を描く
©アナスタシア
地下資源を巡り全面戦争に突入したノーデンフェルト国は、思いのほか長引く戦いを強いられ、女性も貴重な戦力として戦場に投入することを決定した。陸軍は捕虜になるリスクが高いため、国内初の女性部隊は潜水艦乗りとして任務を与えられることに…。主人公の青年士官アルル大尉は、そんな女性部隊を率いる潜水艦の艦長として、新鋭艦ウルディアーナに乗り込むのだった。艦長以外は全員女、しかも艦内には司令部の監視役が密かに潜入しているらしい。色々気遣うことはありそうだが、母国を勝利に導けるか否かは、新鋭艦ウルディアーナの活躍にかかっている。はたして、アルルは勝利を掴むことができるだろうか?
このゲームは、女性だけで構成された潜水艦ウルディアーナを指揮し、適切な指示を出しながら戦いぬく戦闘モードと、ヒロインたちとの物語を進めるAVGモードで構成されている。戦闘モードはコマンド選択方式で、状況に適した指示を出し続けないと、味方の好感度が下がるだけでなく、ヘタすりゃ撃沈の憂き目に遭う……。モニター前で熟考したくても、選択肢には制限時間が設定されているので、素早い状況判断が必要なのだ。といっても、戦闘そのものの難易度はさほど高くない。敵が警戒中なら「潜伏」で様子見、警戒解除したら「前進・旋回」で近づき、有効射程距離に到達したら「魚雷」で攻撃を加えればOK。ひらたく言えば、「進め・止まれ・撃て」の三要素を、状況に応じて選べばいいのだ。シンプルで遊びやすいシステムだけど、時間制限付き選択肢の緊迫感は個人的には好きじゃない。シナリオのみで緊迫感を演出してほしいな。まぁ、戦闘ムービーを多用し臨場感の演出もしてるので、ミドルプライスのゲームシステムとしては手抜き感がなく頑張ってると思うけどね。
©アナスタシア
ただ、ちょっと不満なのは、魚雷の命中率や障害物との遭遇回数がランダム要素に左右されすぎ、理不尽とも思える展開に陥ることが……。連続で障害物に遭遇し続け、航路がクリアになって目的地に到達するまで10分近くもかかったり、連続3発魚雷がハズレたりとイライラする局面があった。もちろんサクッとクリアできるときもあったので、「運が悪かった」の一言なんだろうけど。できれば、一度エンディングをクリアしたら、戦闘をオフにできる機能をつけて欲しかったな。あと、戦闘中に同じメッセージが繰り返されるのも、イライラを募らせたッス。ターンごとに「すべてが順調ですね」「うむ、しかし油断は命取りだ」的な紋切り型の会話を、何十回も読まされのは正直シンドイ。もう少し会話パターンを充実させるか、いらない会話はカットしたほうがよいと思う。重複会話を多用すると、戦闘のテンポが悪くなるからね。
さて、ストーリーを進めるAVGモード部分だが、想像以上に物語が良かった! Hゲーの定番ストーリー「戦場でミラクルを起こし続け、豊臣秀吉のような立身出世をはたしハーレムを築く」的な展開にしなかったのは英断だ。一介の艦長にできることは、戦場で小さな勝利を積み重ね、部下を生きて本国に帰還させることだけ……。「小さな戦術的勝利を積み重ねても、戦略的な劣勢は覆せない」というジリ貧ストーリーは非常にリアリティがあって感情移入できたでござる。大尉からとんとん拍子で元帥に昇進する痛快な物語も嫌いじゃないけど、本作のようなリアリティ重視のストーリーは、軍事系好きのハートをくすぐるんじゃないかな? ただ、リアル重視のストーリー展開ゆえか、Hも現実的な「純愛」の枠に収まりすぎてて、エロゲーとしてはパンチが弱いのが玉にきずかなぁ。艦長の性格が好青年タイプなので、変態チックなエロ演出は出来なかったんだろうけどね。上官の立場を利用し部下にセクハラしたり、女捕虜を尋問・凌辱するようなシーンはないので、エロ重視の人は注意が必要だ。しかし、本作はそういう濃厚なエロがなくても、部下との友情・絆・愛といった人間関係や心理描写が巧みで、プレイヤーを物語にグイグイ引き込む魅力を兼ね備えている。ホロッと泣かせる展開もあるし、ヒロインたちの非戦闘時のコミカルな会話も魅力たっぷり。緩急巧みな雰囲気作りは秀逸でござった。戦争ゲーが苦手な人にも、是非プレイしてもらいたいな。
(by イ・ヤン提督)