もしも明日が晴れならば
ぱれっと | Windows98/Me/2000/XP | 800x600 |
8800円+税 | 1Play9時間 | 属性:幽霊 |
難易度:4 | Keyディスク不要 | オススメ:☆☆☆☆ |
死んだはずの恋人が幽霊となって帰ってきた
両親を亡くし、主人公の鳩羽一樹の家に引き取られた野乃崎姉妹。それ以来、ずっと家族同然に暮らしてきた3人。夏の初めに一樹は姉の明穂に告白し、2人は恋人同士に。ところが、明穂は風邪をこじらせ、あっけなくこの世を去ってしまう。夏も終わりに近づき、ようやく一樹と妹のつばさが立ち直りかけた頃、明穂は幽霊として2人の元へ帰ってきた…。
ゲームはコマンド選択型のAVGで、特に変わった点は無し。選択肢もどれを選べばどのキャラの好感度が上がるのか分かりやすいものばかりなので、難易度も低め。あえて変わっている点を上げるとすれば、エフェクトのたぐいが豊富なことくらいかな。特に後ろ向きの立ちキャラを用意してあるのはユニーク。後ろ向きの立ちキャラを使用することで、キャラ同士が会話している感じを上手く演出しているね。それ以外では必要と思われるものは一通り装備している。ただ、詳しくは後述するけど、メッセージスピードの遅さはちょっと問題アリだ。
©ぱれっと
ストーリーに関してはかなりのハイレベル。メインヒロインの明穂が幽霊ということで、ハッピーエンドのパターンはある程度予想がつくし、実際に予想どおりの結末になる。プレイしていて思わず驚いてしまうような、奇想天外な展開は一切無かった。だからといって、ストーリーがつまらないのかというとそんなことは全くない。どのキャラのシナリオも丁寧に作り込まれていて、物語の盛り上げ方が実に上手い。特に挿入歌の使い方は絶妙で、これ以上はないというくらいのタイミングで挿入歌が流れ始め、涙腺の緩い人はハンカチ必須でしょう。
ヒロインとして登場するキャラクターたちも実に魅力的。メインヒロインである明穂は言うに及ばず、妹のつばさ、鬼切りの巫女の珠美、物の怪の千早も十分すぎるほどの存在感を持っている。どのキャラも純粋でかわいいだけでなく、人間らしい(人間じゃないキャラもいるけどね)黒い部分がしっかりと描かれているのがいい。そうした黒い部分をどう昇華させていくかというのが、物語後半のポイントになるわけだけど、これもキレイに納得いく形でまとめられているしね。ゲーム終盤ではキャラ別ルートに分岐するわけだけど、キャラ別ルートでも選ばれなかったキャラクターたちがしっかりと物語に絡んでくるのもいいね。特に明穂はどのルートでも存在感バツグン。時にはルートのヒロインを食ってしまいかねないほどの存在感だったりする。個人的には珠美ルートが特にお気に入り。
感動系のゲームとしてはかなりハイレベルな本作ではあるんだけど、問題もいくつか。まず第1に、共通ルートが長すぎ。このゲームはChapter1からChapter6までの章仕立てで、Chapter1からChapter5までが共通ルート。しかも、シナリオ分岐のフラグがゲーム序盤から出てくるものだから、セーブデータを利用してのプレイ効率化というのもやりにくい。トドメとばかりにメッセージスキップのスピードが遅いものだから、繰り返しのプレイはストレスが溜まってしまう。それから主人公の性格もプレイヤーによっては気になってしまうかも。このゲームの主人公は典型的なヘタレ主人公で、優柔不断であっちにフラフラ、こっちにフラフラ…。ヒロインたちが魅力的なだけに、余計に主人公のヘタレさ加減が気になってしまった。委員長の彩乃の扱いもちょっとひどいような気が。「不遇だよぉ」はつばさの口癖だけど、一番不遇だったのはシナリオすら用意してもらえなかった彩乃かも。メインヒロインの明穂の親友で、明穂の死によって落ち込む主人公を支え続けたという美味しい役所なんだけどねぇ。彩乃を攻略したかったという人は多そうなんだけどなぁ…。
このゲームは不満点もいくつかあるけれど、それを補ってあまりあるほどの魅力がある作品であることも確か。突出した点はないけど、全ての要素が高いレベルでバランスが取れている作品という感じかな。不満点の分を差し引いて、オススメ度は☆4つとしたけど、実際には☆4.5個と考えてもらえればいいかと。泣けるゲームがプレイしたいという人には是非プレイしてもらいたい作品だね。
(by Suno)