あえかなる世界の終わりに
キャラメルBOX | Windows98/Me/2000/XP | 800x600 |
8800円+税 | 1Play15時間 | 属性:SF |
難易度:5 | Keyディスク不要 | オススメ:☆☆☆ |
ストーカー事件から始まる物語の行方は?
AIの暴走事故により家族を亡くし、CQショットと呼ばれる競技のプロ選手として生計を立てている主人公。そんな主人公は幼なじみの柚子からある相談を受ける。それは友人の千冬がストーカーに狙われているというものだった。柚子の頼みを断り切れず、千冬のボディーガードをすることになる主人公。時を同じくして、人工知能であるNAIPのリップルが主人公の家に居候することに。リップルは何者なのか? そして、千冬をつけ狙うストーカーの目的は?
地上での生活が不可能になり、人類が地下で生活するようになった近未来。閉鎖空間での生活をサポートするために人はコンピューターで家電製品を含む生活のすべてをコントロールするようになる。そして、あまりにも複雑化してしまったコンピューターを制御するために作り出された人工知能がNAIP。そんなサイバーパンクっぽい世界観を持つのがこの作品。ストーリーは千冬を狙うストーカーを追ううちに、主人公がより大きな事件に巻き込まれていく…という流れになっている。物語は中盤以降は二転三転し、特に終盤の緊迫感溢れる展開はハードなストーリーが好きな人ならかなり楽しめるんじゃないかな。プレイ時間はかなり長いけど、一気にラストまでプレイさせるだけの勢いのある作品といっていいでしょう。
ゲームシステムに関しては、オーソドックスなコマンド選択型のAVG。特に変わったギミックがあるわけじゃないけど、ストーリー重視のAVGなのだから特に問題なし。あえて言うなら、クイックセーブをつけて欲しかったというくらい。まあ、セーブはいつでも可能だし、1つ前の選択肢に戻ることもできるのでクイックセーブが必須というわけではないね。気になったのが異常にCPU使用率が高いこと。3Dゲームなら分からなくもないんだけど、こうした2DのゲームでそれほどCPUを酷使する必要はないと思うんだけど…。ハイパースレッディングやデュアルコア環境ならCPU使用率は50%を超えることはないんだけど、シングルCPU環境だとCPU使用率が常に100%になってしまうので、この点は改善を望みたい。もっとも、ゲームをプレイするだけなら特に不具合はないんだけどね。
©キャラメルBOX
さて、オススメ度☆3つと、今ひとつの評価をしているわけだけど、その理由は4つ。1つ目はキャラごとの扱いの差。キャラの重要度でいえば「リップル>>>>>ひまわり>>ナギ=千冬>>柚子」という感じ。ハッキリ言ってリップル以外はオマケと言っていい。千冬エンドは何一つ謎が解明されないし、ナギは単にヒロインの頭数をそろえるためのキャラだし、柚子エンドに至ってはバッドエンド代り。かろうじてひまわりがストーリーに絡んでくるくらい。リップルシナリオが面白いだけに、リップル以外を目当てにプレイを始めたプレイヤーは納得いかないはず。これならいっそ、ヒロインはリップル1人に絞って、その中でエンディングにバリエーションを持たせた方が良かったのでは? 2つ目は共通ルートが長いこと。ゲームの90%以上が共通ルートで、エンディングで誰とHをするかが変化するくらいというのは、繰り返しのプレイが必須のゲームとしてはちょっとツライ。もうちょっと選択によりストーリーの変化をつけてほしかった。そして3つ目が回収されない伏線があること。リップルシナリオは面白かったと書いたけど、このシナリオでも回収されない伏線が多々見受けられる。しかも、物語の中で重要な意味を持っていそうなものだけに、クリアしてからもイマイチ、スッキリしない。全キャラのエンディングを見たらトゥルーエンドルートがプレイ可能になるんじゃないかと思って調べてみたけど、それもないみたいだし…。もう少しシナリオを練り込んでほしかったというのがプレイを終わっての感想。最後の問題点がHシーンの薄さ。まあ、エロメインのゲームではないといってしまえばそれまでなんだけど、最後に取って付けたようなHシーンがあるだけというのはあまりといえばあまりの扱い。「萌え」ではなく「燃え」がこのゲームのテーマだというなら、最後のバトルシーンはカットインを使うなりして、もっと盛り上げてほしかったね。
かなり辛口のレビューになってしまったけど、リップルルートに限定するならオススメ度☆4つつけてもいいくらいの良作。小生意気で騒々しくて、恥ずかしがり屋というリップルのキャラクターが気に入ったならプレイして損はない。それにしても、名作、傑作となるだけの素質を持ちながら最後の詰めが甘かった、という感じですな。なんというか、本当にもったいない作品だね。
(by Suno)