車輪の国、向日葵の少女
あかべぇそふとつぅ | Windows98/Me/2000/XP | 800x600 |
パッケージ版:8800円(税別) ダウンロード版:6800円(税込) | 1Play15時間 | 属性:感動 |
難易度:3 | 2005/11/25発売 | オススメ:☆☆☆☆ |
「義務」を負った者たちのヒューマンドラマ
罪を犯すとその罪にあわせた「特別な義務」を背負わされる世界。そして、特別高等人とは、それらの罪人を更正させる職業。その特別高等人をめざす主人公、森田賢一は最終試験のため、ある田舎町にやってきた。そこで賢一に科せられた試験は「恋愛できない義務」、「1日が12時間しかない義務」、「大人になれない義務」を背負った3人の少女を更生させるというものだった…。
ゲームは章仕立てで、第1章は物語全体の導入部、第2章から4章までは義務を背負ったヒロインを更正させる物語、最終章になる第5章は物語全体の謎解きと結末という構成。プレイしていて上手いなぁと思ったのが、最初の章を費やして世界観の説明を自然な形で行なったこと。このゲームは非常に特殊な世界観を持った作品。そうした作品だと、どうしてもプレイヤーに世界観を理解させるのが難しいもの。無理に説明しようとすれば、妙に説明臭くなってしまうしね。説明臭さを上手く消し、プレイヤーを物語に引き込むシナリオライターの力量は素直に脱帽。ただ、最初の章では主人公がかなり電波なヤツに見えてしまうのはちょっとね…。すべての描写には意味があって、きちんと伏線となっているんだけど、最初の段階ではまだそれは分からないので、ここで引いてしまう人もいるかも。「なんだかキモイ主人公だなぁ」と思っても、ちょっとだけ我慢してプレイすることを推奨。
©あかべぇそふとつぅ
そして、第2章以降は1章に付き1人ずつ義務を解消していくことになるわけだけど、1つの章で1つのゲームとして成り立ってしまうほどの密度と完成度を持っている。主人公は特別高等人候補生ということで、ヒロインたちを指導していく立場にあるわけだが、上から見下ろして指導していくのではなく、ヒロインと同じ視点でともに悩み傷ついていくのがいい感じだ。また、理不尽な社会の象徴、あるいは絶対悪の象徴として登場する法月将臣の存在も物語を盛り上げてくれる。法月は特別高等人候補生である主人公を指導する教官なんだけど、冷酷で無慈悲に主人公たちを追いつめていく法月は、まさに悪の権化。もし法月がいなかったら、この物語は緊迫感に欠けたものになっていただろうね。そんな法月を乗り越え、自分の弱さを乗り越えていくヒロインと主人公の姿はまさに感動的。章のラストでヒロインたちの義務は解消されることになるんだけど、ここは涙なくしては見られないシーンでしょう。
最終章である第5章は、これまでの伏線を回収し、物語を収束させるための章。ネタバレになってしまうから詳しくは書けないけど、プレイしていていい意味で「やられたっ」と思いましたよ。まさかこんな仕掛けが用意されていたとは…。ストーリー展開は燃えと萌えの融合した見事なもの。息もつかせぬ展開で楽しませてくれる。エンディングも爽やかで、いい感じに余韻を感じさせてくれるものだ。
さて、非常に完成度の高い本作だけど、気になった点もいくつか。まず、共通ルートが非常に長い。物語全体の90%は共通ルートといってもいいほど。さらに難易度が低めで、1回プレイすればシナリオの分岐点はどこなのがすぐに分かってしまう。だから初回プレイは凄く楽しめるんだけど、2回目以降のプレイはCGとエンディング探しの作業になってしまう。まあ、メッセージスキップが高速なので、ストレスは溜まらないけどね。とりあえず、初回プレイは1番気に入ったキャラを攻略するのがオススメだ。それから、Hシーンは短くてあっさり目。ストーリーの流れ上、仕方のない部分もあるけど、もうちょっと頑張ってほしかった。
正直に言って、それほど期待せずにプレイし始めた作品だったけど、プレイし終わってみれば大満足の出来。個人的には今年のベスト10に入る作品といってもいい。共通ルートの長さやHの薄さを考慮してオススメ度は☆4つとしたけど、骨の髄まで鬼畜な人や、ひたすらエロを求める人以外ならきっと満足できるんじゃないかな。
ところで、ヒロインの1人の日向夏咲。この夏咲ってどう頑張っても「なつみ」とは読めないような気が…。まあ、たいした問題じゃないといえば問題じゃないんだけど、気になってしまったもので…。
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(by Suno)