魔導巧殻~闇の月女神は導国で詠う~
エウシュリー | WindowsXP/Vista/7 | 1280x720 |
9870円(税込) | 1Play30時間 | 属性:ファンタジー、国盗りSLG |
難易度:8 | 2013/4/26発売 | オススメ:☆☆☆☆ |
エウシュリー初のリアルタイムSLG
大陸中原で五大国の1つとされるメルキア帝国。だが、帝国は宿敵・ユン・ガソル連合国の猛攻を受け、東部に位置するセンタクス領が陥落してしまう。この危機に対して皇帝は、妾腹の弟であるヴァイスハイト・ツェリンダー将軍の派遣を決定。ヴァイスハイトは副官のリセルとともに、反撃に打って出るが……。
©エウシュリー
大艦巨砲主義を掲げるエウシュリーの第14弾作品。物語の舞台となるのは『戦女神』や『幻燐の姫将軍』シリーズでおなじみのディル=リフィーナ世界。物語そのものは今作で完結しているので、他のシリーズをプレイしておかないとストーリーを理解できないということはない。ただ、『戦女神』のキャラがちょっとだけ登場したりするので、『戦女神』や『幻燐の姫将軍』などをプレイしていれば、より楽しめるかも。
物語自体は、やや散漫な印象だったかな。というのも、事件の影に見え隠れする黒衣の異形の謎を追うというのが本作のメインのストーリーなのだけど、それと同時に国別のストーリーが進行していくから。複数のストーリーが同時進行することで、メインのストーリーの印象がやや弱くなってしまっていると感じてしまった。ただ、これはやむを得ない部分もあって、本作はどの国とどんな順番で戦うかということを、プレイヤーがかなり自由に選択できるようになっている。そのため、国ごとにストーリーを独立させておかないと、物語上の矛盾が出まくることになってしまう。壮大で緻密なストーリーを求めるなら、戦う国の順番を固定しておくべきだろうけど、それだとゲームとしての自由度がなくなってしまうしね。物語はつまらなくはないんだけど、過度な期待はしない方がいいという感じかな。
Hシーンについても同様で、ボリュームそのものは決して少なくはない。CGが差分抜きで167枚、イベント数が61あるので、フルプライスのゲームとしても大ボリュームといえるだろう。シチュエーション的にも純愛から凌辱まで幅広く取りそろえているので、飽きることなく楽しむことができる。重箱の隅をつつくようなことをいうなら、Hの仕方が比較的ノーマルなものが多いということかな。せっかくファンタジー世界を舞台にしているのだから、凌辱シーンでは魔物を使うとか、もっと突飛なイベントを入れてもよかったんじゃないかなということくらい。ただ、内容的には悪くないんだけどゲーム自体のボリュームが大きいため、イベントの発生頻度が全体として低くなってしまっている。そのため、Hシーンが薄く感じられてしまった。とはいえ、テンポよくポンポンとHイベントが発生するようにするためには、非常識なくらいにイベント数を増やさなければならず、コスト的に無理が生じてしまう。かといってイベント数に合わせてゲームのボリュームを制限したら、ゲームとしての面白さがスポイルされてしまうだろうしね。いずれにしても、エロ目当てで本作をプレイするというのは、あまりオススメできないかな。
©エウシュリー
ゲーム部分に関しては最初はちょっと戸惑ったものの、かなり楽しむことができた。戸惑ったというのはエウシュリー作品では初のRTS(リアルタイムストラテジー)だったことが大きい。ただ、それはあくまで慣れの範囲。慣れてしまえばサクサクと進めることができる。強敵に対しては同盟を申し入れて開戦を先延ばしにして、その間に弱小勢力を潰して戦力を充実させる。そして、戦いになったら足の速いおとり部隊を使って敵をおびき出して、待ち構えていた本隊で包囲殲滅するなんてことができてしまう。戦闘だけでなく、街作りもなかなか楽しかった。ゲームの効率だけを考えるなら足りないステータスをアップさせる施設を作りまくればいいだけなんだけど、もっとかっこいい街を作ろうとか考え出してしまうと、もう止まらない。いい意味での時間泥棒ですな。さらに、街のレイアウトを工夫することで、戦闘時の敵の進軍ルートを制限することも可能になるので、自由度はかなり高く、プレイヤー次第で色々な楽しみ方のできるゲームという印象だ。なお、RTSと書いたけど、戦闘中はいつでも一時停止することができ、停止中に細かく操作することができるので、半RTSといった方が正確かもしれない。この一時停止機能を使えば、リアルタイムは苦手というプレイヤーでも馴染みやすいんじゃないかと思う。
ただし、ゲーム部分での不満点もチラホラと。まず、ゲームが進むと、仲間になるユニットがどんどん増えていく。プレイ方法にもよるけど、最終的には汎用も含めて200ユニット近くなるんじゃないだろうか。これだけ人数が増えれば、そのすべてのステータスを暗記しておくことは難しくなる。当然、編成画面で色々なステータス順でユニットを並び替えるソート機能が欲しくなるわけだけど、これが装備されていない。また、本作では仲間にしたモンスターを合成して、新たなモンスターを生み出すことが可能。そして、どのモンスターを組み合わせればいいのかというのは、情報画面から確認することができる。ここまではいいのだけど、肝心のモンスター合成画面で組み合わせを確認することは不可能。いちいち合成施設を出て街まで戻らなくてはならない。こういうかゆいところに手が届かないような仕様って1つ1つは些細なことであっても、積み重なると大きなストレスになってしまう。特に本作のように規模の大きいゲームでは、こうしたストレスがボディブローのように効いてくる。テストプレイをしているときに、誰か指摘しなかったのかなぁ? もしも続編があるのなら、こうした点は是非とも改善して欲しいところだ。
不満点を色々書いてしまったけど、『戦女神』や『幻燐の姫将軍』で慣れ親しんだシステムを捨て、あえて新しいことに挑戦しようとする姿勢は、個人的には高く評価したいところ。基本システムの素性は悪くないのだからこれ1作で終わらず、いつかまたRTSシステムの作品をリリースして欲しいね。全体としてはエウシュリーファンはもちろん、1つのゲームをじっくり楽しみたいというプレイヤーにはオススメできる作品かと。オススメ度は☆4つとしたい。
(by Suno)