夢幻夜想曲 リニューアル Voice Version
アプリコット | Windows95/98 | 640x480 |
8800円+税 | 1Play約6時間(音声オン時は8〜10時間) | 属性:館、メイド |
難易度:2 | Keyディスク必要 | オススメ:☆☆☆☆(泣き、メイド) |
ファンタジックな異色の館モノ
©アプリコット
1人旅に出た大学生の慎一は人里離れた山道で遭難、見知らぬ洋館の一室で目を覚ます。その館は、心にさまざまな問題を抱えて現実逃避した人々が、時空を超えて迷い込む不思議な空間だった。
このゲームはいわゆる館モノ。館モノというとSM・調教などハードなHが売り物のゲームが多いのですが、この作品は「癒し」がテーマになった異色のシナリオが高く評価され大ヒットしました。美少女ゲームの名作のひとつだと思います。
ヒロインは皆つらい体験や不幸な境遇から逃れてきた女性たちです。記憶喪失で手首にはリストカットの傷跡を持つ少女。仕事上のトラブルから人間不信に陥ったキャリアウーマン。大人へと変化していく体に戸惑い、無意識に子供のままでいることを望んだ少女などなど。現実の世界から遮断されたその館は彼女たちにとって居心地の良い安全な場所です。しかも食料などはどこからか補充され、頼りになるメイドさんもいて生活の心配もありません。何やらひきこもりを象徴しているようですが、実際、この館の中でも自分の部屋に閉じこもってなかなか会えない女のコもいます。
今では心を病んだヒロインなど珍しくありませんが、このゲームが発売されたのはひきこもりが問題になる以前の1995年。当時、美少女ゲームではシリアスなテーマの作品自体少なかったので、とても画期的でした。これだけだとかなり重い話のようですが、ヒロインの中には、海に還れなくなって井戸に棲みついた人魚や、土蔵の中で夜ごと鬼と交わる少女、恋人を待ち続けるために魔物となってしまった女などもいて、ファンタジックなエピソードもいくつかあります。
そんな女性たちに対して、主人公は極普通の大学生。彼自身は特に深刻な悩みを抱えているわけではないので、館に来てしまったのはアクシデントだと思っているが、館の女主人からは「館に新しい風を入れるために導かれた存在」だといわれる。とにかく彼は早く元の世界に戻ろうと、館の隅々まで調べ、住人たちに会って話を聞き、その方法を探ります。そんな主人公との交流を通して女の子たちは前向きになり、やがて彼と一緒なら館を出てもいいという気持ちになっていきます。しかしエンディングで主人公は誰か1人を選ばなくてはなりません。そこまでのシナリオは一本道で、館の各部屋や庭などを移動していれば、順番にイベントが発生します。
イチオシのヒロインはメイドの美和子さんです。奉公先の主人に調教されていた美和子さんはその男が死んで館に逃れてきたあとも、夜になると彼女の心が作り出した男の幻影に奉仕し、陵辱されていました。自分は穢れた存在で、愛される資格がないと思い込んでいる彼女の心から暗い過去の幻影を追い払うのは容易ではありません。しかしゲーム中、ほとんど怯えたり困った顔をしている彼女だからこそ、ハッピーエンドの笑顔は最高です。それから最初に、館モノにしてはHが売りではないと書きましたが、美和子さんに限っては結構ハードです。
このゲーム、オリジナル版はWin95専用、98年に発売されたリニューアルボイスバージョンは95/98専用です。残念ながら2000やXPではプレイできないのですが、どちらもヴァーチャルPCでの動作は確認しています。
(by 館まもる)