ECHO
フェアリーテイル・HARD COVER | Windows98/2000 | 640x480 |
8800円+税 | 1Play約16時間 | 属性:無感情少女、ロリ |
難易度:6 | Keyディスク必要 | オススメ:☆☆☆(サスペンス・純愛系) |
突然の大災害がすべてを狂わせた
©フェアリーテイル・HARD COVER
なんの前触れもなく起こった地震と津波で、壊滅的な被害を受けた大都市。その地下で意識を取り戻した主人公は、自分に関する記憶をすべて失っていた。それから主人公の前に現れ、共に地上への脱出を目指す人々。彼の婚約者だと訴える清楚な少女、凛。親友で、主人公の属する地質学研究機関の部下である、庄司。わがままで気の強い女子大生の弥生。国際司法機関の弁護士で、主人公を保護しにきたという切れ長の美人、夏月。そして、金髪に褐色の肌を持つ、謎につつまれた少女、クラウベン。地上へ生還するためのサバイバルは、徐々にこの大災害の真実、失われた主人公の記憶、隠されたもうひとつの重大な事件へと発展。登場人物を巻き込み、愛憎をからめた運命の奔流に物語は捕らえられてゆく。
2000年にフェアリーテイル・HARD COVERから発売されたこの作品。システムは選択肢型のノベルタイプだが、相当の意欲作だったと見えて当時としては斬新な、さまざまな試みが盛り込まれている。特に際立つのは物語の叙述方法。複数回プレイさせることを前提としているのだが(コンプリートには最低でも14回プレイする必要あり)、毎回スタート地点は同じ場所になっている。ただ、ある条件によって、最初に出会うヒロインが変わってくる。それにより、ヒロインたちとの人間関係が変化し、物語の違った側面が見えてくるという仕掛けだ。これは前衛演劇などで使われる「席替え」と呼ばれる手法だ。時系列と同時に登場人物の立場を組替えて、意図的にドラマツルギーのカオスを作り出し、逆にテーマを分かりやすく抽出するというものだ。この作品で、その試みはある一点を除いてかなり成功しているといえる。その一点とは、プレイ時間が途方もなく長いということだ。約16時間というプレイ時間のサイクルだと、プレイヤーが根気負けして「席替え」の効果まで気が回らない可能性がある。「長いゲームはちょっと」という人にはオススメできないが、ストーリーのボリュームや質を求めるユーザーは一度プレイしてみてほしい。全部のシナリオをクリアすると遊べるおまけシナリオも、実験的な内容で斬新だ。キャラ同士で深層心理を探り合う掛け合いや、声優の配役をシャッフルして、その違和感から人格を浮き彫りにしたりと、SFでいう「超架空」という技法が駆使された内容になっている。
もうひとつの重要な試みが、ソフトの売りでもある「ヘッドホン・ノベル」という新ジャンル。ヘッドホンでプレイすることを前提にしたシステムで、効果音や人物の発声の位置の反響を計算し、擬似的な立体音場を作りだしている。この試みは勇み足で終わったようで、実際に聞いてみると、たしかに奥行きは感じるが、立体的音場という意味で、それほどの迫力は感じられない。ただ、ヘッドホンでのプレイが前提という条件が、思わぬ副産物を生んでいる。ヘッドホンだと、通常のパソコンのスピーカーより低い周波数帯の再生が可能(ものにもよるが)なので、クリエイターが低音を意識した音作りをしている。マグマの溶解音、瓦礫の崩壊、そして、Hシーンでの舌使いなどの音が妙に生々しくていい感じだ。
HシーンはCG枚数が少ない割に、テキスト量が膨大である。ヌキどころはHに入ってから相当先なので、慌ててズボンを下げないよう注意したほうがいいかもしれない。あと、ヒロインによってHのときの主人公の性格がかなり違う。テキストをきちんと読んでいないと、Hシーンで何が起こったのか分からずに戸惑う可能性もある。
メインヒロインのクラウベンは、無表情、無感情でボソボソと喋る感じの少女。その言葉は「だから愛してもらいたかったの?」「本当の自分が心があると思っているのね」など、心理的に鋭利な感じ。この手のヒロインが好きな人はツボにはまるだろう。
(by ぷらっぴ)